元信託銀行・株式ファンドマネージャーから No.15 <中華人民共和国について>

2017年08月14日

 

元信託銀行・株式ファンドマネージャーから No.15

 

<中華人民共和国について>

 

 中華人民共和国は、WTOに加盟した2000年頃より、急速な経済成長を遂げ、名目GDPは日本を抜き、いまや世界第2位となりました。

 その経済力を背景に、2012年に習近平氏が国家主席になってからは、一帯一路構想の推進、南シナ海埋め立て、IMF体制に対抗するかのようなAIIB創設等、帝国主義的野心を露わにした行動が目につきます。

 

 その中国を地政学的観点から見てみましょう。

 国土面積は、米国とほぼ同じです。人口は、米国が約3.2億人に対して、中国は13.7億人も抱えています。人口密度は、平均すると米国の4.3倍ですが、中国の西側の国土の大部分は、砂漠(内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区)と高い山脈(青海省、チベット自治区)が占めていますので、実際の都市部の人口密度は極めて高いと思われます。米国に例えるならば、ミシシッピー川の東側に10億人以上が住んでいる感じではないかと思います。

 

 中華人民共和国サイドから見れば、一帯一路構想や南シナ海埋め立ても、地理的要素を考慮すると頷ける部分があります。

 

 まず、陸路については、北にロシア、南にヒマラヤ山脈、インドがあるため、最終需要地である欧州と繋がるためには、新疆ウイグル自治区からカザフスタン等旧ソ連領かつイスラム圏を通過せざるを得ず、ロシアとの関係は大きく悪化させられないという負い目があります。

 一方、海路については、北極を下にして地図を真逆にして見ると分かりますが、太平洋には、カムチャッカ半島、日本列島、沖縄諸島、台湾、フィリピンが列をなして囲んでいるように見えます。中華人民共和国が主張している南シナ海を取り巻く九段線は、ベトナム、フィリピン、マレーシア、インドネシア等が利害関係を持っており、国際社会がすんなりと認めるはずがないといえます。

 残る海路は、中華人民共和国と友好関係が深いラオス、カンボジア経由でタイ湾にでるか、ミャンマー経由でアンダマン海にでるしかなく、アフガニスタンやパキスタンからインド洋にでるには紛争地域を通る必要があります。中華人民共和国は、こうした地域への投融資を行っていますが、陸路+海路という非効率性と裏腹の関係にあります。

 もしも米国やロシアと敵対的関係になれば、陸路か海路、あるいは両方が閉ざされるため、地政学的に見て、中華人民共和国単体で帝国主義を貫こうとしても、現時点ではかなり無理があるのではないかと思う次第であります。

 

(平成29年7月)

 

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