2017年06月23日
元信託銀行・株式ファンドマネージャーから No.7
<頭と尻尾は……>
株式投資に限らず、様々な投資対象に通じる有名な相場格言の一つに「頭と尻尾はくれてやれ」というものがあります。
ご存じの方も多いかもしれませんが、蛇足ながら解説させていただきます。
例えば、ある医薬品銘柄が新薬を開発したとか、ある銘柄の新製品が爆発的に売れて始めたというようなケースでは、株価が上昇基調を辿り、底値から天井値まで、3、4倍になることが、株式市場ではたまにあります。
このようなケースで、自分がその銘柄を買った時期と売った時期との差が、1.5倍とか2倍で留まった場合、「なんで、もう少し早く気付いて、安く買えなかったとのか?」とか「なんで、辛抱強く銘柄を保有し、天井値あたりで売れなかったのか?」と自分を責める投資家は多いかと思います。
ここで重要なことは、底値と天井値は、あとで株価チャートを見て初めて分かることであり、事前には誰も分からないということです。
魚にたとえると、尻尾の底値付近では、情報が広まっていないか、「本当に、大丈夫?」などと、自信を持って買えない状態であり、頭の付近では、情報が浸透しきっていて、「もう既に、割高だけど、もっと上がるんじゃないか」といったムードが形成され、その銘柄を売ることを躊躇するような状態です。
その銘柄を売買するにあたって、自信が持てない領域が、尻尾と頭で、身の詰まった魚の胴体を手に入れることできれば、十分という話です。
まず、そういった銘柄を買うという決断ができ、利益が乗った状態で売るという決断が出来て、例えば1.5倍や2倍に資金が増えれば、御の字だということです。
一日中、様々な株価と睨めっこしているプロの機関投資家ですら、良くてそんなものです。
本業が別にあり、いつも相場や銘柄のことを考えることができる環境にいる方は、セミプロの個人投資家や退職していて時間を持て余している方以外には少ないと思われます。
大部分の方は、長期間で実績を伴っている投資信託に預けられた方が得策でしょう。しかも、日本の市場を含めて、世界の株式市場を対象にしている場合は、上述のようなケースに出くわす機会が増えることは言うまでもありません。
銘柄選択型(アクティブ型)ファンドは、指数連動型(パッシブ型)ファンドに比べれば、信託報酬というコストが少々高いのですが、そのコストを負担してもお釣りが十分出ているファンドも世の中にはあるのです。
(平成29年5月)
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