元信託銀行・株式ファンドマネージャーから No.21 <米国共和党内の勢力分類、特徴について>
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元信託銀行・株式ファンドマネージャーから No.21 <米国共和党内の勢力分類、特徴について>

 

元信託銀行・株式ファンドマネージャーから No.21


<米国共和党内の勢力分類、特徴について>

 

 2020年の米国大統領選挙、上下院議員選挙については、国内の全ての主流メディア、また米国においてもFOX News、Newsmax等を除く、大半の主流メディアが選挙戦について、公平なスタンスで報道していなかったと筆者は思っています。

 Youtube、Twitter等のSNSから情報を得ていた人と主流メディアから情報を得た人との間では、大統領選の結果についての評価は180度異なると思われます。

 

 SNSの発達がなければ、筆者も主流メディアから情報を得るしかなく、主流メディアが、プロパガンダ機関に徹していることを肌感覚で知ることもなかったと思っています。もちろん、SNSを運営する企業もプロパガンダ機関の性質を帯びており、SNSで流れる情報も取捨選択する必要があります。こうしたなか、真実が何なのかについて、すべてを知ることはできないことを前提としつつも、常に、真実を示す情報を追い続けるスタンスこそが重要であると考えます。

 

 2020年の選挙結果について、未だ監査などが行われている地域もある中、早くも来年2022年には、上院議員のうち3分の1、下院議員全員が改選となる中間選挙が行われます。

 米中の対立構造が激化し、自由民主主義vs権威独裁主義の対立軸が構築されつつある状況において、日本の安全保障上の同盟国であり、日本の政治、経済、金融市場に大きな影響を与える米国の中間選挙や2024年の大統領についての情報を解釈する手掛かりを読者の皆様と共有させていただきたいと思っております。

 

 そこで、今回の本ブログ(No.21)では、共和党を構成する各勢力の分類、特徴について、次回(No.22)では、民主党の概要、各勢力の分類、特徴について、筆者なりにまとめてみたいと思います。

 まず、日本国際問題研究所の著作から、2016年時点における外交・安保思想の観点で共和党を類型化したものを以下に引用します。

 

(1)リアリスト(現実主義者)

 一般に、リアリストの外交は、ニクソン・キッシンジャー型の外交を志向し、いわゆる「保守穏健派」の思想と重なる部分も少なくない。レーガン政権(1981~89 年)以前の共和党外交の主流派的存在であり、現状維持をめざして勢力均衡や交渉・妥協を重視する。国際協調を意識し、国連などの国際機構や同盟関係を活用し、武力行使には慎重といえる。こうした点から政策面では下記の保守強硬派、新保守主義と対立することが少なくない。該当する人物像を挙げるならば、ブッシュ父子両政権にわたって政策顧問役を務めたブレント・スコウクロフト(Brent Scowcroft)や、G.W.ブッシュ政権1期目の国務長官だったコリン・パウエル(Colin Powell)らは、キッシンジャー路線の流れを汲む典型的なリアリストと位置づけられる。

 

(2)保守強硬派

 保守本流を自認し、対外的脅威に力の行使で対処する志向が強く、レーガン流の「力による平和」を掲げる。同盟国や国益を重視する半面、国連など国際組織を通じた国際協調には懐疑的で、単独行動主義的傾向が強い。紛争解決後の国家建設支援、経済支援、人道的介入には否定的である。保守大衆層にアピールしやすいポピュリズム的政治文化を反映している。レーガン政権の国防長官を務めたキャスパー・ワインバーガー(Caspar W. Weinberger)、G.W.ブッシュ政権のディック・チェイニー副大統領(Richard Cheney)、イラク戦争を指導したドナルド・ラムズフェルド国防長官(Donald Rumsfeld)らはその典型といえる。

 

(3)新保守主義(neo-conservative)

 「力(軍事力)」に「道義(正義、道徳性)」重視を加えた「力と道義による秩序」を志向する。1960~70年代に民主党タカ派の一部が転向した。第二次大戦期にナチス・ドイツやソ連から米国に亡命・逃避したユダヤ系知識人が多く、強烈な反全体主義、反共、反専制思想が根底にある。自由、民主主義、人権などアメリカ型価値の拡大と敷衍が米国や世界全体の利益になると考え、こうした思想を実現するために、アメリカが「善意の覇権(benevolent hegemon)」の役割を背負うことも否定しない。ユダヤ系は米国社会において少数派であることから、政策を実現する政治的な「腕力」には乏しい。このため新保守主義者の多くは、政策立案面に特化した知識人・専門家(ポリシー・インテレクチュアル)として「保守強硬派」と行動を共にすることが多く、過去の政権においてもそうした例が目立つ。雑誌『ウィークリー・スタンダード(The Weekly Standard)』のウィリアム・クリストル(William Kristol)や著名なコラムニストのロバート・ケーガン(Robert Kagan)らは そうした政策知識人の代表格であり、G.W.ブッシュ政権のラムズフェルド国防長官の下で イラク戦争を推進したポール・ウォルフォウィッツ国防副長官(Paul D. Wolfowitz)、チェイニー副大統領の首席補佐官を務めたルイス・リビー(I. Lewis Libby, Jr.)、ジョン・ボルトン国務次官(John Robert Bolton)らも新保守主義者の典型といえよう。

 

(4)孤立主義者 ①(paleo-conservative)

 新保守主義との対比で「古式、旧世代(paleo)の保守」と呼ばれる人々を指す。彼らは「超保守主義」と呼ばれることもある。第二次大戦まで保守の主流を占め、最後まで参戦反対を唱えた「アメリカ・ファースト委員会」(America First Committee)などの組織に結集して、対外非介入・孤立主義を説いた。国際機構には懐疑的で、国際協調や同盟を忌避し、「海外に出て行って、怪獣退治などをしようなどと考えてはならない」(第6代ジョン・ Q・アダムズ大統領の名言)を引用することが多い。コラムニスト出身でニクソン、フォード、レーガン政権のスピーチライターや広報担当補佐官を務めたパット・ブキャナン(Patrick Buchanan)は自他共に認める「超保守主義者」である。

 

(5)孤立主義者 ②(libertarian, paleo-libertarian)

 「経済保守」、「リバタリアン」とも呼ばれ、徹底した「小さな政府」を求める思想に立ち、アメリカの経済的国益にそぐわない対外関与の排除を掲げる。自由貿易やアメリカ経済に有用な移民の受け入れは支持する半面、「世界の警察官」の役割や同盟の維持に反対する。北大西洋条約機構(NATO)や日米同盟などの脱退や解消を主張し、草の根保守「茶会運動」の支持も厚い。今回の大統領選に出馬しているランド・ポール(Randal Paul)や、 その父親で連邦下院議員を務めたロン・ポール(Ronald Paul)は典型的なリバタリアンである。

 

(6)宗教保守(evangelical)

 キリスト教信仰の自由を最大の目的とする。武力介入には慎重だが、「信教の自由」の信念と道義に基づく対外支援や介入を支持する。信教の自由、中絶や人身売買禁止といった価値を掲げて、スーダン、中国、北朝鮮などへの働きかけには積極的である。

 

 以上で示した類型から、第45代アメリカ合衆国大統領であったドナルド・トランプ氏の外交・安全保障に対する政策スタンスを顧みると(4)~(6)に近いものであったことがわかります。

 

 トランプ氏の(4)孤立主義者 ①(paleo-conservative)的な側面は、MAGA(Make America Great Again)運動に象徴されます。MAGAのフレーズを使用したのは、1980年の大統領選挙において、ロナルド・レーガン氏が最初ですが、トランプ氏は2016年および2020年の大統領選挙で使用しています。国連に批判的であり、2000年代以降の米国企業の中国への製造業移転(グローバリズム)によって、形骸化した製造業のサプライチェーンの米国への回帰を摸索し、既定路線だったとはいえ、アフガニスタンからの撤退方針を打ち出しました。

 

 次に、トランプ氏の(5)孤立主義者 ②(libertarian, paleo-libertarian)的な側面は、2016年大統領選挙時の公約であるBuy American、Hire American を実現するため、NAFTAの解消および新NAFTAであるUSMCA(米国、メキシコ、カナダ協定)により、原産地規則を大幅に強化したこと、TPPからの離脱、米国以外のNATO加盟国が軍事面においてタダ乗りしているとの主張を展開したこと、日米同盟における日本の防衛予算の積み増しに言及したこと、必ずしも意図した通りの結果とならなかったものの、企業の設備投資拡大を期待して法人税減税を行ったこと、また、上手くいかなかったものの、オバマケアの見直しを行ったこと等に現れています。

 

 さらに、トランプ氏の(6)宗教保守(evangelical)的な側面は、トランプ政権下では、極めて限定的な軍事作戦を行ったものの大きな戦争を起こしていないこと、エルサレムをイスラエルの首都として正式に認め、「テルアビブからエルサレムへの大使館の移転」の方針を発表し実行することで、トランプ氏の支持母体であるキリスト教福音派に対する公約を果たしたこと、国境の壁を築くことで、不法移民流入に伴って発生していた人身売買の問題を解決しようとしていたこと、対中国政策において、貿易面や安全保障面での強硬姿勢を強めていったこと等に現れています。

 

 こうして、トランプ政権を振り返れば、主流メディアが印象操作づけた「金ピカ成金で、暴言を吐き、粗野で、下品なワシントン・アウトサイダー」というイメージからは大きく乖離しており、支持層に対する公約を着実に実行した勤勉な大統領だったことが分かります。

 トランプ氏の超然とした姿勢は、ワシントンに長年いる職業政治家、法曹界、官僚、マスコミ、ウォール街のエスタブリッシュメントの危機感を強める格好になり、「ありもしないロシア疑惑」に政権期間中の大半を割かれ、2020年の大統領選挙でのキャッチフレーズである「ワシントンの沼の水を抜け!~Drain the swamp !~」につながり、共和党にいながらバイデン政権の誕生に異議を唱えなかった(2)、(3)の海外への介入主義者たちをRINO(Republican In Name Only;名ばかり共和党員)と呼んだ一連の出来事は、容易に受け入れられるものだと感じられます。

 

 次回(No.22)において、民主党リベラルの概要、各勢力の分類、特徴をまとめ、今回(No.21)と併せ、米国の現状について説明してみたいと考えております。

 

(令和3年9月)

 

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